住宅ローン控除が終わった後の世界、繰り上げ返済ラッシュに乗るべきか

住宅ローン控除の適用期間終了は、マイホームを持つ多くのご家庭にとって、家計戦略を見直す大きな転換点となります。年末調整による還付金がなくなり、実質的な住居費負担が増すことで、「手元の貯蓄を使って繰り上げ返済を行い、少しでも利息や残高を減らしたい」という焦燥感に駆られる方は決して少なくありません。しかし、周囲の「繰り上げ返済ラッシュ」の波に、家計の状況を整理しないまま乗ってしまうことにはリスクも潜んでいます。
先日、茨城県つくば市にお住まいで、製造業にお勤めのお客様からご相談をいただきました。その方は、10年間の住宅ローン控除が終わったのを機に、手元にある約300万円の貯蓄をすべて繰り上げ返済に充てようと計画されていました。しかし、詳しくお話を伺うと、これからお子様が高校、大学へと進学する大切な時期であり、教育費のピークが目前に迫っている状況でした。「借金を早く返したい」という一心で、万が一の備えや将来のための現金を枯渇させてしまうことは、かえって家計の首を絞めることになりかねません。
私たちはそのお客様に対し、手元の現金を温存しながら、低金利メリットを活かして総返済額を圧縮する「借り換え」というアプローチをご提案しました。本記事では、このお客様がどのようにして「繰り上げ返済」以外の選択肢を見つけ、教育資金の不安を解消しながら返済負担を軽減したのか、実際の支援事例をもとにしたストーリーをご紹介します。完済を急ぐだけが正解ではない、プロの視点からの家計防衛策として参考にしていただければ幸いです。
1. 住宅ローン控除期間の終了後に焦って繰り上げ返済を行う前に、まずは確認しておきたい手元資金と家計のリスク管理
住宅ローン控除の適用期間が終了すると、これまで年末調整や確定申告で戻ってきていた還付金がなくなり、実質的な住居費負担が増えたように感じます。このタイミングで多くの人が検討するのが、手元の貯蓄を取り崩して行う「繰り上げ返済」です。利息負担を少しでも減らし、完済時期を早めたいという心理は非常に健全ですが、周囲の返済ラッシュに流されて焦って手続きをするのは禁物です。
なぜなら、住宅ローンの繰り上げ返済には「手元の流動性資金が失われる」という不可逆的なデメリットがあるからです。一度銀行に返済してしまったお金は、急な病気やケガ、失業、あるいは災害などで突発的に現金が必要になったとしても、すぐに取り戻すことはできません。住宅ローンは数あるローン商品の中でも非常に低い金利で借りることができる「優良な借金」であり、慌てて返済することで手元の現金を枯渇させる方が、家計にとっては大きなリスクとなる場合があります。
まず確認すべきは「生活防衛資金」の確保です。一般的には毎月の生活費の6ヶ月分から1年分程度の現金を、いつでも引き出せる普通預金などで持っておくことが推奨されます。さらに、ライフプラン上の大型出費も見落とせません。お子様の大学進学費用などの教育資金や、築10年を超えたあたりから必要になる給湯器の交換、外壁塗装などの住宅修繕費用です。これらを差し引いてもなお余剰資金があるかどうかが、判断の分かれ目となります。
また、現在の住宅ローン金利が変動金利などで1%を大きく下回る水準であれば、借金を急いで返すよりも、手元資金を厚くして万が一に備えたり、インフレリスクに対応するためにiDeCoや新NISAを活用して世界株式などの資産運用に回したりする方が、トータルでの家計の安定性を高める可能性もあります。
「完済」というゴールテープを切ることは素晴らしい目標ですが、その過程で家計が資金ショートしてしまっては本末転倒です。まずはご自身の家計のキャッシュフロー表を確認し、現金が減ることのリスク許容度を冷静に見極めることから始めましょう。
2. つくば市近郊で実際にあったご相談事例から学ぶ、繰り上げ返済ではなく借り換えを選択して教育費を確保した成功ストーリー
住宅ローン控除の適用期間が終了すると、毎年の還付金がなくなり実質的な住居費負担が増えるため、多くの人が「金利負担を減らすために繰り上げ返済をしなければ」という焦りに駆られます。特につくば市や土浦市、守谷市といった茨城県南エリアは、教育熱心なご家庭が多く、お子様の進学に向けた資金計画について非常にシビアな地域です。しかし、手元の預貯金を安易に住宅ローン返済へ充てることは、家計のリスク管理という観点では必ずしも正解とは限りません。ここでは、繰り上げ返済を思いとどまり、あえて「借り換え」を選択したことで将来の資金不安を解消した事例をご紹介します。
ご相談者は、つくばエクスプレス沿線のつくば市内に一戸建てを構える40代のご夫婦です。新築から10年以上が経過し、住宅ローン控除が終了したタイミングでした。手元にある約500万円の貯蓄を使って期間短縮型の繰り上げ返済を行い、「今のうちに借金を減らして、完済年齢を早めたい」というのが当初の希望でした。
しかし、詳しくライフプランのキャッシュフロー表を作成してシミュレーションを行うと、数年後に控えているお子様の大学進学時に、教育費負担が家計を圧迫することが判明しました。もし今、手元資金の大部分を繰り上げ返済に使ってしまうと、最もお金が必要な時期に現金が枯渇し、住宅ローンよりも金利が高い「教育ローン」や「奨学金」を借りなければならないリスクが浮上したのです。低金利の住宅ローンを急いで返済した結果、高金利のローンを借りることになっては本末転倒です。
そこでこのご家庭が選択したのは、繰り上げ返済ではなく「より低金利な住宅ローンへの借り換え」でした。当初借り入れていた金融機関の金利よりも条件が良いネット銀行や、金利優遇キャンペーンを行っている他の金融機関へ借り換えることで、毎月の返済額を減らしつつ、総返済額も圧縮することに成功しました。
この事例で最も重要な成果は、手元の500万円を「温存できた」という点です。これにより、お子様の理系大学進学や県外への下宿、あるいは私立高校進学といった選択肢を狭めることなく、急な出費にも対応できる盤石な家計を作ることができました。住宅ローン控除が終わったからといって、周囲の繰り上げ返済ラッシュに流されるのではなく、まずは「手元の現金を減らさずに総返済額を減らす方法」を検討することが、これから教育費のピークを迎える世代には極めて有効な戦略となります。
3. 完済を急ぐよりも効果的な場合があります。低金利メリットを活かして総返済額を圧縮するプロのアプローチ
住宅ローン控除期間が終了すると、多くの人が「金利負担を減らしたい」という一心で繰り上げ返済を検討し始めます。借金が減ることは精神的な安定に繋がりますが、現在の経済環境において、手元の資金を一気に返済に充てることが必ずしも正解とは限りません。ファイナンシャルプランニングの視点から見ると、歴史的な低金利環境を逆手に取り、あえて「借り続ける」ことで資産全体を増やす、あるいは守るという選択肢が浮かび上がってきます。
まず注目すべきは、住宅ローン金利と資産運用利回りの差、すなわち「イールドギャップ」です。例えば、ネット銀行などの変動金利を利用している場合、金利は0.3%から0.5%程度で推移しているケースが少なくありません。仮に手元に300万円の余裕資金があったとして、これを全額繰り上げ返済に充てても、軽減される利息コストは限定的です。一方で、この300万円を新NISA(少額投資非課税制度)などを活用して、S&P500や全世界株式(オール・カントリー)といったインデックスファンドで運用した場合、長期的に見て年利3%から5%程度のリターンを期待することは十分に現実的です。借金のコストよりも運用のリターンが上回る状態であれば、繰り上げ返済をせずに運用した方が、トータルの資産額は大きくなります。
次に考慮すべき重要な要素が「団体信用生命保険(団信)」の存在です。住宅ローンには、契約者が死亡または高度障害状態になった際にローン残高がゼロになる保険が付帯されていることが一般的です。繰り上げ返済を行って完済を急ぐということは、この極めて割安な生命保険を自ら解約しているのと同じ意味を持ちます。特に、がん団信や疾病保障付きの団信に加入している場合、手元に現金を残したまま保障を継続する方が、万が一のリスクヘッジとして優れている場合があります。
さらに、インフレ(物価上昇)局面では、現金の価値が目減りする一方で、借金の実質的な負担価値も減少します。今後、物価や給与水準が上昇していくと仮定すれば、固定された借入元本の重みは相対的に軽くなっていきます。低金利で固定された借金を維持し、手元のキャッシュフローを厚くしておくことは、インフレ対策としても有効な戦略となり得るのです。
もちろん、金利上昇リスクへの備えは必要ですが、すべての余剰資金を繰り上げ返済に回すのではなく、生活防衛資金や教育資金、そして老後資金のための投資元本として確保しておくバランス感覚が重要です。完済を急いで流動性を失うよりも、低金利の恩恵を最大限に活用し、資産全体をマネジメントする視点を持つことこそが、住宅ローン控除終了後の賢いアプローチと言えるでしょう。
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